便中カルプロテクチンを用いた過敏性腸症と腸炎の鑑別
12 Nov. 2020過敏性腸症は腸炎や腫瘍などが無いにも関わらず、大腸の運動や分泌の異常で下痢や便秘、腹痛などを認める人の総称です。医師からはいわゆるストレス性と説明を受けることが多いです。治療としては食事や生活習慣改善、症状に応じた内服治療などを行いますが、長年お困りの方も多いです。
若い方に多く、内科へ受診しても処方を受けるだけで経過を見るように言われる場合や、内視鏡への抵抗感から検査をためらう方も多いです。
しかし、過敏性腸症として治療を受けている方の中に、潰瘍性大腸炎やクローン病を代表とする炎症性腸疾患が隠れていることがあります。診断には内視鏡検査が必須とはなりますが、検査自体を悩まれる方に対しては、当院では検便検査である便中カルプロテクチン検査が可能です。
カルプロテクチンは白血球の中の好中球という細胞に含まれるカルシウム-亜鉛結合蛋白です。腸に炎症がある場合は、便中のカルプロテクチン値が上昇します。この値を測定することで炎症性腸疾患があるかどうかの予測が高感度で可能となります。あくまで診断の補助としての役割ですので確定診断には至りませんが、内視鏡をすることへ抵抗がある方ではまず検便検査をすることをお勧めいたします。
当院では胃腸専門医としてこの検査を利用し多くの腸炎患者様の診療を経験しております。気になる方はご相談ください。
(参考)日本臨床検査専門医会 (下記文字クリックでリンクへ移動します)
(参考2)当院院長 岩本の過去の学会発表より(下記文字クリックで閲覧できます)