【潰瘍性大腸炎とは】
潰瘍性大腸炎とはびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症と定義されています。発症の原因は不明とされていますが自身の免疫の過剰な反応が原因の一端と考えられています。発症年齢は10歳代から30歳代の若年者から中高年に至るまで様々です。若い方ではストレス性の下痢症や痔と考えておりなかなか受診に至らず診断が遅れるケースも珍しくありません。
診断基準の症状としては持続性または反復性の粘血・血便、あるいは その既往があることが条件です。確定診断には大腸内視鏡検査が必要で、肛門付近の直腸と呼ばれる部位から小腸側に連続性に広がっていくことが内視鏡的な特徴とされます。
内視鏡所見は時に感染性腸炎などのほかの疾患とも類似することも多く、それらの疾患の除外は専門的な内視鏡診断や便培養検査などを行い鑑別します。
【潰瘍性大腸炎と診断されたら】
残念ながら「治癒」といったことは望めません。潰瘍性大腸炎は繰り返す疾患であり良い状態(寛解といいます)に落ち着くことはありますが、ある時に悪化(再燃といいます)をきたす可能性は何年経とうともあります。そのため定期的な通院、治療が必要となります。また長期間の罹病で大腸癌のリスクが上がってくることも定期検査の理由として挙げられます。特に状態がよくないまま長年経過をみることで大腸癌リスクは高くなりえますので症状が軽くとも適切な治療が必要です。現在の潰瘍性大腸炎の治療目標としては症状がないこと(臨床的寛解と呼びます)だけではなく内視鏡検査でもまったく炎症のない状態(粘膜治癒と呼びます)まで治療を行っていくことが現在の標準となっています。たとえ無症状でもしっかり治療をおこない、内視鏡的にも寛解させないと悪化のリスクや大腸癌リスクが高くなることが考えられます。
【潰瘍性大腸炎の治療】
潰瘍性大腸炎は症状から寛解・軽症・中等症・重症といった分類がされます。
また大腸の中で炎症の広がる範囲により直腸炎型(狭いタイプ)・左側大腸炎型(大腸の半分)・全大腸炎型に分類されます。その分類とこれまでの治療歴に基づき治療を決定します。
軽症例ではメサラジン製剤と呼ばれる炎症を抑える薬剤を使用します。
重症例やメサラジンのみで改善を認めない場合はステロイド製剤を始めとする免疫を抑える治療を行います。
・メサラジン製剤 (5ASA製剤)
炎症細胞から放出される活性酸素の消去、ロイコトリエンの生合成抑制により抗炎症作用を発揮します。軽症から中等症例の寛解導入に有効で、その第一選択薬となります。5-ASA製剤は用量依存であることが知られています。左側大腸炎型や直腸炎型では注腸剤や坐剤の単独もしくは内服との併用することもあります。
・ステロイド製剤
5-ASA製剤で効果不十分な中等症や重症例で経口、経静脈投与で使用されます。また直腸炎型でも効果不十分な場合はステロイド注腸剤や坐剤を使用することがあります。
ステロイドは初期治療(寛解導入)に有効とされますが良い状態を保つ継続治療(寛解維持)には有用性は低く、原則的には短期間で終了することを目指します。
・免疫調節剤
5ASA製剤のみでは寛解維持が困難な場合などの寛解維持に使用します。副作用として嘔気などの消化器症状、膵炎、肝機能障害や血球減少があり、使用開始後は血液検査を頻回に行う必要があります。また遺伝子的に強く副作用がでてしまい、使用が困難な方が日本人では約1%いることが近年しられています。免疫調節剤を使用検討する場合は事前に遺伝子検査(Nudt15)の測定を行うことで使用可能かを評価します。
・生物学的製剤/JAK阻害剤/カロテグラストメチル
上記の薬剤等で状態のよくならない場合は生物学的製剤と呼ばれる薬剤を使用して寛解導入・維持を行います。現在では抗TNF-α抗体・インテグリン阻害剤・JAK阻害剤・抗IL12/23抗体・カロテグラストメチルと呼ばれる薬剤が保険適応となっています。それぞれ薬剤の特徴がありどれを選択するかは専門医との十分な相談が必要です。
【当院で行える治療】
2025年1月現在、約250人の方が当院に定期通院いただいています。当院では日本炎症性腸疾患学会(JSIBD)認定指導医(専門医)が診療をしております。メサラジン(ペンタサ・アサコール・リアルダ)・サラゾピリン・ステロイド(プレドニン・レクタブル・コレチメント)・アザニン(アザチオプリン)・レミケード(インフリキシマブ)・ヒュミラ(アダリムマブ)・シンポニー・ステラーラ・オンボー・エンタイビオ・ゼルヤンツ・ジセレカ・リンヴォック・カログラ・スキリージの治療中・治療歴のある患者様が通院中です。
現在の薬剤で必ず効果のある薬剤・絶対に安全な薬剤といった絶対的な薬剤は潰瘍性大腸炎ではまだ存在しません。そのため治療方針に関しては専門的観点と患者様個々の状況に応じて治療方針を決定します。上記理由から多くの種類の薬剤を当院では使用中となっています。
安定している方・難治性の専門治療をご希望の方・土曜日診療をご希望の方などはお気軽にご相談ください。
【当院炎症性疾患外来について】下の文字をクリックしてください。
当院は日本炎症性腸疾患学会から指導施設の認定をされております。
診察につきましても同学会認定専門医が診療を行っております。
(日本炎症性腸疾患学会HP)
https://www.jsibd.jp/guidance-facility/
【よくあるご質問】
Q:潰瘍性大腸炎は治りますか?
A:残念ながら完治といった状態とはなりません。良い状態・安定した状態(寛解)には至りますが急な悪化をする可能性は寛解期の方でも有しており定期的な通院・投薬・検査を必要とすることが多いです。状態は個々の方で異なりますので主治医より処方された内服忘れなど無いように継続することが重要です。一方で薬剤によっては副作用を生じることもあります。状態が悪い場合も医師に早くご相談ください。
当院の公式SNSです。ご利用ください。
【公式LINE】WEB予約・WEB問診など可能です。
LINE:https://liff.line.me/1645278921-kWRPP32q/?accountId=355cezho
【YouTube】内視鏡の説明・病気の説明などを動画で公開しています: https://www.youtube.com/@iwamotonaikaonakaclinic
【facebook】: https://www.facebook.com/iwamoto.onaka.clinic
【Instagram】:https://www.instagram.com/iwamotoonakaclinic/
【大腸癌の発症年齢が低年齢化してきている】
現在、日本において若年層における大腸癌の増加が懸念されています。従来、大腸癌は高齢者に多く見られる疾患として認識されてきましたが、近年、特に20代から40代の若年層においても発症率が増加していることが確認されています。
日本では、厚生労働省の「がん統計」や日本癌治療学会などのデータから、若年層における大腸癌の増加傾向が示されています。例えば、日本癌学会の統計によると、大腸癌は日本における癌の中で最も発症率が高い部位であり、若年層でもその傾向が顕著になっています。特に、生活習慣の変化や食生活の影響が指摘されており、加工食品や脂肪分の多い食事、運動不足がリスクを高める要因とされています。
加えて、国立がん研究センターの研究によると、若年層の大腸癌患者は早期に診断されることが少なく、発見が遅れることが多いと報告されています。これにより、治療の難易度が上がり、予後が悪化する場合もあります。若年層における大腸癌の増加は、早期発見と予防の重要性を再認識させるものです。
大腸癌は遺伝的要因だけでなく、食生活、運動不足、喫煙、過度の飲酒などの生活習慣が密接に関連していることがわかっています。このような背景から、若年層に対する健診と予防が重要です。
【大腸癌の心配な方は便潜血を】
まずは大腸癌健診をうけましょう。便潜血陽性の方は大腸カメラをうけましょう
(下記の文章をクリックしてください)
2024年10月~12月で
胃カメラ 314件
大腸カメラ 205件(うち大腸ポリープ切除 113件)
を実施させていただきました。多くの方に受診いただきありがとうございます。今後も安心・安全な検査を継続してまいります。
大腸癌は増加している疾患です。最近では若年齢発症も増えています。便潜血検査で大腸癌健診をしましょう。
便潜血陽性の方は放置をせずに大腸カメラをうけましょう。早期発見・早期治療こそ重要です。
当院ではピロリ菌検査(ピロリ抗体・尿素呼気試験)が受けられます。
【ピロリ菌とは】
ピロリ菌とは胃の粘膜(表面)に生息し、萎縮性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃癌などの病気を引き起こす原因となる菌です。ピロリ菌を除菌することで胃癌の発症リスクを下げることが可能となります。ピロリ菌陽性の方では年0.5%ほどの発癌リスクがあるとされています。長期の感染となるほどそのリスクが高くなることが想定されますので健診等で見つけた際は早めに除菌することが望ましいです。
【ピロリ菌治療を保険診療で行うにあたり必要なこと】
・ピロリ菌の治療は抗生物質の内服治療を1週間行います。
保険適応で処方を行うには上部内視鏡(胃カメラ)の結果で萎縮性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍等の結果とピロリ菌陽性の証明(血液検査・糞便検査・呼気試験など)の2つを確認して初めて可能となります。他院や健康診断で検査を行った方は必ず結果を持参ください。口頭でのお伝えでは承ることはできません。
・健康診断の採血等でピロリ陽性であった場合も上部内視鏡検査が必須となります(原則半年以内)
・胃カメラの結果が無い方は保険診療でピロリ菌検査は行えません
【胃カメラを行わないでピロリ検査・治療希望の方へ】
胃カメラ検査をどうしてもうけることができない、といった方は少なからずいらっしゃいます。その場合は保険診療での処方はできず、自費診療となります。
当院では
で承っております。また3次除菌も同様です。希望の方はご相談ください。
注:ピロリ菌は除菌薬内服でも失敗することがあります。その際は薬剤を変更しての2次除菌を行う場合があります。その際も上記と同様の金額が再度発生します。
服薬による副作用で治療が必要となった際は保険診療での治療となります。
*注:自費検査で受ける際の結果は郵送対応をしております。外注検査となるため2-4週間ほど送付に時間を要します。ご了承ください。
【よくある質問】
Q:子供のピロリ菌検査はできますか?
A:小児に関しましては胃潰瘍などの診断をうけていない無症状の方の治療は推奨されていません。詳しくは小児科でお尋ねください。
【当院胃カメラについて *下の「胃カメラ検査」をタッチしてください】
口から・眠る麻酔なしの標準の胃カメラ検査方法であれば、数日~1週間以内での検査・朝1番の検査・夕方の検査(朝食摂取可、昼食抜き)があります。
【胃カメラの予約状況と費用】
2024年7月~9月で
胃カメラ 261件
大腸カメラ 188件(うち大腸ポリープ切除 101件)
を実施させていただきました。多くの方に受診いただきありがとうございます。今後も安心・安全な検査を継続してまいります。
【メサラジン(5ASA製剤)とは】(潰瘍性大腸炎・クローン病)
(日本炎症性腸疾患協会の刊行するIBDニュースに院長が執筆させていだいたものより改定・抜粋しています)
炎症性腸疾患においてメサラジン(5ASA製剤)は初期治療として最も頻用される重要な基盤となる薬剤です。危険性が低く、寛解導入(腸炎を良くする)や寛解維持(良い状態を保つ)ことのできる薬剤です。特に潰瘍性大腸炎ではこの薬剤の効果次第でその後の再燃率が大きく変わります。しかし、残念ながらその薬に対して副作用の出てしまう方もいます。
【メサラジン不耐(5ASA不耐)とは】
メサラジンは日本国内で、潰瘍性大腸炎ではペンタサ®、アサコール®、リアルダ®、サラゾピリン®の3種類、クローン病ではペンタサ®が使用可能です。「メサラジン不耐」といった言葉には明確な定義はありませんが、一般的にはメサラジンで副作用の出てしまう症例、つまり「メサラジンに耐えられない」場合を表現します。メサラジンに耐えられない理由として、メサラジンに対する免疫反応(アレルギー:飲むことが全くできない)によるものと、免疫反応とは異なった薬剤の代謝能異常による副作用(内服量が多くなると出現する)がありますが厳密に診断することができないことが多いです。
メサラジン不耐の所見としては内服開始から1~2週間以内に下痢の悪化、発熱、皮疹などの症状や血液中の好酸球という細胞の上昇が見られます。その他には重篤な副作用として膵炎、間質性肺炎や間質性腎炎といった臓器障害、肝機能障害などが挙げられます。また内服を中止することで症状が改善すること、内視鏡所見が症状の悪化と比べて比較的軽度であることも疑うきっかけとなります。
【メサラジン不耐と診断されたら】
メサラジン不耐の患者さんの治療はステロイド治療、免疫調節剤(アザニン®、ロイケリン®)や生物学的製剤などの難治例の治療薬を使用せざるを得なくなることが多くなり、それは身体的負担や経済的負担が大きくなることが予想されます。不耐を疑われた場合は専門医と患者さん自身がよく相談して治療方針を定めていくことが重要となります。
【メサラジン不耐症の際の免疫治療も当院で実施しています】
当院でもメサラジン不耐の患者さんには免疫治療を行います。患者さんの重症度や薬剤の効果、安全性、投与方法(点滴、方に注射など)や妊娠可能性などのライフイベントも加味して患者さんごとに最適な薬剤を決定します。
詳しくは当院受診した際にご相談ください。
日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)
(IBDニュース Vol 68. 院長執筆の掲載紙です)
http://ccfj.jp/system/wp-content/uploads/2019/12/ibdnews68web.pdf
山梨県甲府市 いわもと内科おなかクリニック
当院は日本炎症性腸疾患学会(JSIBD) 認定指導施設です。
日本炎症性腸疾患学会(JSIBD)
2024年4月~6月で
胃カメラ 272件
大腸カメラ 203件(うち大腸ポリープ切除 89件)
を実施させていただきました。多くの方に受診いただきありがとうございます。今後も安心・安全な検査を継続してまいります。