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潰瘍性大腸炎の治療(消化器内科・胃腸科)

02 Jan. 2021

潰瘍性大腸炎の治療(消化器内科・胃腸科)

潰瘍性大腸炎は厚生労働省の定める指定難病の一つで再燃と寛解を繰り返す疾患です。重症化すると入院や手術(大腸全摘や人工肛門など)が必要となり、長期罹患で大腸癌のリスクも上がるとされています。潰瘍性大腸炎の診断・治療選択は難しく、誤った診断や治療を受けていることも少なくありません。また潰瘍性大腸炎と診断された中で他の疾患の方も含まれていることもあります。専門医の下で適切な診療を受けることが望ましいです。

 

① 5-アミノサリチル酸 (5-ASA)製剤 (サラゾピリン、ペンタサ、アサコール、リアルダ)

炎症細胞から放出される活性酸素の消去、ロイコトリエンの生合成抑制により抗炎症作用を発揮します。軽症から中等症例の寛解導入に有効であり、その第一選択薬となります。5-ASA製剤は用量依存(多いほど効果が高い)ことが知られており、中等症では最初から高用量で開始するのが望ましい薬剤です。左側大腸炎型や直腸炎型では注腸剤や坐剤の単独もしくは内服との併用により寛解導入、維持に有用とされます。

② ステロイド製剤

5-ASA製剤で効果不十分な中等症や重症例で経口、経静脈投与で使用されます。また直腸炎型でも効果不十分な場合はステロイド注腸剤や坐剤を使用することもあります。ステロイドは寛解導入に有効とされ、投与量、投与経路について明確にされる研究はありませんが、中等症では40mg/日で開始することが多く、重症例では1mg/kg/日で開始することが多いです。一方で長期投与により効果が減弱することも知られており、寛解維持には極力使用せず、5ASA製剤のみや免疫調節剤、生物学的製剤での維持へ切り替える必要があります。

③ 免疫調節薬 (ロイケリン、イムラン、アザニン)

5ASA製剤のみでは寛解維持が困難な症例やステロイド依存例などの寛解維持に使用されます。アザチオプリン(イムラン、アザニン)と6-メルカプトプリン(ロイケリン)の2種類が潰瘍性大腸炎には使用されます。アザチオプリンは生体内で6-メルカプトプリンに分解され作用し、6-メルカプトプリンは6-チオグアニンヌクレオチドに変換され核酸合成阻害をすることで免疫抑制を行ないます。副作用として嘔気などの消化器症状、膵炎、肝機能障害や血球減少があり、使用開始後は血液検査を頻回に行う必要があります。日本人では副作用の予測因子としてNudt15遺伝子の測定が保険診療で可能です。免疫調節剤を使用する必要がある患者さんでは事前にNudt15を測定し変異の有無によって副作用の起こりやすさを予測します。およそ1%の人では重篤な副作用が予測され使用ができません。

④ 生物学的製剤

ステロイド治療無効例や抵抗例などに主に使用する。本邦で潰瘍性大腸炎に対して保険適応となっている薬剤はインフリキシマブ、アダリムマブ(ヒュミラ)、インテグリン阻害薬(エンタイビオ)、JAK阻害剤(ゼルヤンツ)、抗IL12/23抗体(ステラーラ)があります。

炎症性サイトカインあるいは炎症性メディエーターの産生・ 活性化のカスケードにおいて中心的な役割を果たしている部位を抑制することで炎症細胞が腸管に集まることを阻害し抗炎症作用をもたらします。いずれの薬剤もステロイド難治例に対して寛解導入、寛解維持効果があり50-70%の方で有効と報告されています。それぞれの薬剤は投与方法(内服、注射など)や投与間隔(毎日、2週ごと、8週ごとなど)がそれぞれ異なり、効果や安全性も異なります。どの薬剤が適切かは専門医とよく相談し決定をする必要があります。1剤が無効であっても他の薬剤へ切り替えることで寛解導入することも期待できます。

 

潰瘍性大腸炎治療指針

http://www.ibdjapan.org/pdf/doc01.pdf

 

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